中国のADAS(先進運転支援システム)市場の現状と将来性(2021年)

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要約と結論

ADAS(先進運転支援システム)は、自動運転実現に向けた重要な基盤技術であり、中国市場でも急速な成長が見込まれている。現時点では海外メーカーが主導しているものの、中国国内でも新興企業の台頭が進みつつある。
市場規模は2020年の844億元から2025年には約2,250億元へと拡大が予測されており、今後は安全規制の強化や消費者ニーズの高まりを背景に、さらなる普及が進むとみられる。

拡大する中国のADAS市場

ADAS(Advanced Driver-Assistance Systems、先進運転支援システム)は、自動運転の実現に向けた重要な第一段階の技術である。完全自動運転の実現には、まずADASの普及が不可欠とされている。

ADASの導入により、車両および道路の安全性が大幅に向上することから、自動車分野において最も成長が期待される領域の一つとなっている。

現在は海外メーカーの普及が先行しているが、中国国内でも徐々に存在感を高める企業が現れている。

  • 2020年: 中国ADAS市場規模 844億元
  • 2025年: 約2,250億元(約3倍)へ拡大見込み
ADASが普及すれば、車両と道路がもっと安全になる

ADASとは

「道路交通車両のための先進運転支援システム(ADAS)の用語と定義」によれば、ADASはセンサー・通信・意思決定・制御装置を用いて、運転者の安全運転を支援するシステムの総称で、具体的には、

  • 周囲環境の監視
  • 危険の検知・警告
  • 衝突回避・軽減の支援

などを行う。

実務上は、運転支援機能全般を指す用語として広く使われている。

中国市場でのADAS普及率

ADASはスマートカーの構成要素として重要なシステムだ。車に搭載されている各種センサー(ミリ波レーダー、レーザーレーダー、単眼・ステレオカメラ、衛星ナビゲーション)を利用して、走行中は随時周辺環境のデータを収集し、静的・動的な物体の識別や探知、追跡を行う。またナビの地図データと組み合わせて演算、分析を行うことで、ドライバーに起こりうる危険を事前に察知することで、運転の快適性と安全性を効果的に高めることにつながる。

米国自動車技術者協会が発表した自動運転レベルの区分によると、L2(レベル2)以下を先進的な運転支援技術、L3(レベル3)以上を自動運転技術としている。ただし、自動運転技術の開発においては、L5(レベル5)の完全自動運転化が最終目標である。

経営戦略コンサルティング会社の独ローランド・ベルガー社のデータによると、2020年の中国におけるADASの市場普及率は低く、依然としてADASが全く搭載されていないL0(レベル0)の車が市場の半数以上を占めている。

中国のADASメーカーの現状と将来性

現在の世界ADAS市場は、少数の大手企業に集中しており、下記の企業に代表される上位5社で60%以上のシェアを占めている。

  • BOSCH(ボッシュ)
  • Continental AG
  • Aptiv
  • ZF Friedrichshafen AG

一方、中国国内のメーカーを見てみると、ADAS製品の技術開発はいまだ未熟で、業界は主に新興メーカーが中心となっており、成熟した大手メーカーの参入は少ない状況だ。

代表的な新興メーカーとしては、

  • 清智科技
  • 極目智能
  • 佑駕創新科技

などがある。資金調達状況では、佑駕創新科技や中天安馳がいずれもCラウンドを成功させている。また多くのメーカーがAラウンドでの資金調達に成功していることから、中国のADASメーカーの今後の発展に期待できると言える。

中国のADAS市場の見通し

世界各国の規制当局が、アクティブセーフティ技術を要求あるいは推進していることもあり、ADASの普及率は日増しに高まっている。

FCW (前方衝突警告)/LDW(車線逸脱警報)のようなアクティブセーフティ技術を用いた早期警戒型のADAS製品やAEB(衝突被害軽減ブレーキ)のようなアクティブコントロール型ADAS製品は、近い将来、急速に発展することが予想される。

また消費者による運転体験の追求、各国政府によるADAS関連分野への大規模な投資拡充や車のインテリジェンス化・ネットワーク化に関する中長期的な目標によって、ADAS市場は今後も成長速度をさらに加速させるだろう。

華泰証券の予測によると、中国のADAS製品のうち、AEBとLDWの普及率は2020年時点で40%以上となっている。また、FCWやAPS(自動駐車支援システム)といったシステムの普及率も30%を突破すると予想されている。

中国自動車工業協会によると、2020年には自動車運転支援機能、部分自動運転機能、条件付き自動運転機能の新車搭載率は50%を超えるという。ネットワーク型運転支援システムの搭載率も10%に達し、ADASシステムの総普及率が50%に達して、スマート交通都市建設の需要を満たすことができると予想されている。また高度な自動運転支援機能の増加に伴い、自動車1台に占めるADASシステムの価格は増加するとみられる。

中国自動車工業協会の試算によると、2020年のADAS市場規模は844億元で、前年同期比19.3%増となっている。5Gの段階的な導入に伴いOEMメーカーが続々とADASを搭載した新型車を発表していることから、ADASの普及率はさらに加速していくとみられる。2025年にはADAS市場の規模は2,250億元に達し、L2以下の車にはAPSやACC(アダプティブ・クルーズ・コントロール)の搭載が主流となりそうだ。市場規模はそれぞれ384億元と312億元となる見込みで、今後のADAS市場の規模拡大に大いに貢献する存在となるだろう。

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