半導体不足で急成長!中国の中古車市場と販売チャネルの多様化

市場概要

中国における中古車市場は、他国と比べて中古車が未だ少ないという現状がある。日本では新車より中古車の方が取引数は多いが、中国中古車市場では、中国政府の規制緩和も後押しし、現在成長傾向にある。また、スマートフォンやSNSの普及により、中国語版Tik Tok抖音(ドウイン)を筆頭に、大人気を博す販売チャネルが台頭し、販売ネットワークは多様化している。中古車への消費者イメージの不安も拭えない中、自動車愛好家らや消費者の需要も細分化し、複雑さを増している。

大きな転換期を迎えている中国自動車市場だが、その中古車市場にスポットを当てて、解説する。

まず、中国の中古車市場の現状を見てみよう。

中国自動車流通協会のデータによれば、中古車の取引件数は年々増加傾向にある。増加率こそ変動はあるものの、2023年には中古車市場の取引量はさらに増えると見込まれている。

一方で、自動車買い替えも増加傾向にある。以下図を見てみよう。

青色が初購入、黄色が買い替え、紫色が追加購入となっている。黄色で示した買い替えの比率が年々増加していることがわかる。

一方で、中国の自動車平均寿命は、2011年では約3.8年だったのが、2018年には5年を突破し、自動車業界発展と品質向上に伴い、年々長くなってきている。これに伴い車両メンテナンスの頻度も増し、自動車部品の需要の高まりと共に、市場全体で自動車のアフターサービスの質の向上が一層求められているのが現状である。

中国中古車市場拡大の背景

目次

1.法規制の緩和

中国中古車市場成長の拡大は、主に4つの要因が挙げられる。

1つ目に、中古車ディーラーへの増値税軽減政策である。2020年5月に、中古車販売にかかる増値税を2%から0.5%に引き下げる政策を実施した。

2つ目に、2020年7月には、国務院が発表した文書で、中古車ディーラーの購入車登記手続きの簡素化に触れている。具体的な政策実施には至っていないものの、その方向性は大筋で固まっている。

3つ目に、中古車規制の撤廃を行った。これにより滞っていた中古車の流通が改善され、さらには関連制度の整備を後押しすることになり、中古車市場の門戸が広く開かれた意義は大きい。

4つ目として、2020年に発表された、省を跨ぐ中古車取引の登記促進政策がある。中古車の売り手の登記地か、あるいは買い手の所在地のいずれでも取引に関わる手続きができるようになり、中古車取引の利便性が一層高まった。

中国政府の政策緩和の後押しが、中国自動車業界全体の変革と消費者需要の変化に対応し、中古車市場全体を促進しているといえる。

2.中国中古車市場におけるITの進化

政策の後押しのほか、近年中古車の販売チャネルも進化を遂げている。特にネット上で自動車のライブ販売を行うチャネルが雨後の筍のように増え、自動車販売の主戦場となっている。

中国自動車販売の歴史を辿ると、その変革の過程は劇的だ。

当初の自動車販売は、CCTV(中国中央電視台)や、新聞広告、屋外広告が主流であった。やがて、ブランド認知度の向上とインターネットの発展に伴い、次第に自動車ポータルサイトでの販売が主流となっていく。汽車之家、易車、太平洋汽車網、搜狐汽車、網易汽車といったサイトが次々と誕生し、自動車販売も専門性の高さが求められるようになった。

その後、スマートフォンやSNSの普及に伴い、微博(WEIBO)、微信(Wechat)等での独自媒体での広告投下が主流となり、クチコミによるブランド認知が重要性を増してきた。SNSマーケティングを駆使した新興メーカーが勢いを見せるなど、自動車販売は激動の変化を遂げている。

転換期となったのは、新車販売量が20年ぶりにマイナス成長となった2018年だ。この年、中国語版Tik Tokである抖音(ドウイン)が、国民的人気を博し、ショート動画配信が一気に普及した。自動車愛好家らにも浸透し、今や自動車販売に欠かせないメディアとなったのである。抖音汽車のユーザーは、24歳から40歳までが71.28%を占め、2020年時点で、2.8億人のユーザー数を抱えている。さらに、157の自動車メーカーが抖音の企業公式アカウント「抖音藍V」を開設し、自動車の購入において今や絶大な影響力をもっている。伝統的なディーラー販売網に頼っていたメーカーにとっても、販売手法の転換期に直面している。

まとめ

中国の中古車市場でも、インターネット・スマートフォンの普及に伴い、抖音等の大手プラットフォーマーによる、自動車ライブ販売の配信が人気を集めている。これが、中古車市場販売増加の要因になっていると言えよう。

一方で、問題も存在している。中古車購入後の補償やトラブルのほか、消費者の中古車への知識不足からくるマイナスイメージや不安もある。さらには、先述した中古車の「短命」問題で、中古車に対する消費者の不安要素はいまだ払拭できていない。

これらの問題を解消するには、Tiktok等のライブ配信・公式アカウント等での消費者にわかりやすい詳細な情報配信が、結果として消費者の中古車に対するイメージを改善させ、さらには消費者の知識向上にもつながると言えるだろう。また、これらのチャネルが、中古車販売の主要販売網となり、政府の規制緩和もあり、中古車市場促進につながっているといえる。

主流となっているライブ販売は、ライバーの販売能力によって提供サービスにも差があるのが現状だ。オンライン販売におけるサービスレベルと知識の向上が求められており、より良いライバーを確保できたプラットフォームが、今後の中古自動車販売の主流となっていくと考えられる。

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この記事を書いた人

中国人民大学 経済学部を卒業後、広東敬海法律事務所にてクライアントマネージャーとして勤務。中国法のコンサルティング業務の実績を積み、香港にコンサルティング会社を設立後、日系企業向けにリーガル・コンサルティング事業を展開。中国での事業経験を活かし、日本企業向けに中国市場調査(タイヤ・オイル・冷却器等)を実施し、中国進出に向けて現地パートナー企業の開拓なども行っている。

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