天猫(Tmall)に出店するために知っておきたい 10 のこと

目次

1. 天猫とは

天猫(Tmall)は中国最大の CtoC サイト「淘宝網(Taobao)」を運営する阿里巴巴(アリババ)グループの BtoC モールで、2008 年 4 月に淘宝商城(タオバオモール)として誕生した。2012 年 2 月に現在の天猫に名称変更している。

2013 年の売上は 4410 億元(約 7.7 兆円)で、市場シェアはおよそ 6 割。登録会員数は淘宝網と合わせて 5 億人を超える。インターネット上で毎年 11 月 11 日に開催されるバーゲンセール「双十一」では、2013年に 350.19 億元(約 6000 億円)の売上を達成し、ライバルの EC サイトを抑えて圧倒的な強さを見せた。2014 年は 600 億元(約 1 兆円)突破も期待されている。

最近は海外企業の出店も相次いでおり、現在の出店企業数は 5 万社、ブランド数は 7万を超える。日系ではユニクロ、SONY、ニコン、東芝、コーセー、バンダイ、ATSUGI、花王、タイガー、ケンコーコムなどが出店。「日本」をキーワードに検索すると約 65 万アイテムがヒットする。

2. 二つの条件を満たせば出店できる!

天猫に出店するにあたって、最初にクリアするべき 2 つの条件がある。一つは運営主体が中国大陸で登記された法人であること、もう一つは販売商品に関する許可証を持っていることだ。

一つ目については、中国大陸で登記された法人であれば内資・外資を問わない。ただし香港、マカオ、台湾で登記された法人では出店できない。また販売商品によって資本金の最低金額が定められているため注意が必要だ。現時点で中国法人がなく、出店のために新たに法人を設立するのはハードルが高いという場合、現地の販売代理店や運営代行会社と提携してパートナー名義で出店するのも選択肢となる。

二つ目の許可証については、まず現地法人が販売予定商品の小売ライセンスを所持している必要がある。さらに商品によっては衛生許可証、3C 認証許可証、生産許可証なども必要で、これは実店舗を開く場合と変わらない。ほかに中国における商標登録証や販売権利証などの提出が求められる。なお商標登録は日本ですでに登録していても、中国で改めて登録する必要がある。天猫の場合、登録の申請が受理されていればよいが、受理までには通常 3 カ月ほどかかると言われている。

3. 開店までのステップ

手続きだけならば、最初の申請から最短 2 週間ほどでオープンすることができる。

4. 出店形態

天猫の出店形態には、旗艦店・専売店・専営店の 3 種類がある。

出店にあたっては、消費者の信頼が得やすい旗艦店での出店を第一に考えたい。メーカー直営であれば商品はすべて本物で、万が一何かトラブルがあってもきちんと対応してもらえるというイメージが消費者の中にあるためだ。中国法人がなく現地のパートナー名義で出店する場合でも、パートナーに対し「天猫に出店する唯一認めた旗艦店」であるという証明をすれば旗艦店として出店できる。なおネーミングルールにしたがって、店舗名の後ろに「旗艦店」・「専売店」・「専営店」のいずれかを入れる必要がある。

5. 出店にかかる費用

出店費用には大きく分けて保証金、技術サービス費、販売手数料の 3 つがある。

●保証金

保証金は規定違反が認められた場合に天猫あるいは消費者へ賠償するための預かり金で、開店前に一括納付する。出店形態や販売品目によって金額が定められている。

出店申請時に開設した支付宝アカウントに入金すると、そのまま凍結される。閉店手続き後、3 カ月が過ぎると 10 営業日以内に引き出し可能となる。

●技術サービス費

販売商品によって細かく定められているが、3 万元あるいは 6 万元のいずれか。年末までに翌年分を一括で納める必要がある。返金規定が設けられており、利用者評価と売上額が基準を満たせば、収めた費用の 50%あるいは 100%が返金される。

一例として、婦人服は 6 万元で、年間売上が 36 万元で 50%を返金、120 万元で 100%を返金。玩具や食品も 6 万元で、年間売上が 18 万元で 50%を返金、60 万元で 100%を返金。化粧品は 3 万元で、年間売上が 36 万元で 50%返金、120 万元で 100%を返金。

こちらも支付宝アカウントに入金すると自動的に徴収される。

●販売手数料

送料を除く商品代金に対してかかるもので、商品によって 0.5~5%。取引終了後に売上金額から自動的に徴収される。

一例として、婦人服は 5%、書籍は 2%、玩具は 5%、食品は 2%、電子製品・家電製品は2%、化粧品は4%、教育サービスやチケット手配サービスなどは0.5%となっている。

6. 必要書類

出店申請時に提出が必要な書類には、企業を証明する書類と販売商品の商標に関する書類がある。さらに次の項目で取り上げる販売商品に応じた許可証類も必要だ。

●企業に関する証明書類 (出店形態を問わず提出必須)

●商標に関する証明書類

7. 販売商品に応じた条件と必要書類

天猫では販売商品に応じて出店企業の資本金や経営年数などに条件を設けており、前項の必要書類に加えて、商品に関する許可証類の提出を求めている。ここでは一例として衣料品および化粧品について条件を整理した。

【天猫 2014 年度招商資質細則】http://rule.tmall.com/tdetail-9.htm?spm=0.0.0.0.iaqh1I&tag=self

●男女衣料品

●化粧品・香水・化粧道具類

8. 運営代行業者

天猫では独自の基準を満たした運営代行サービス事業者を紹介している。もちろん自社で全ての運営を行ったり、天猫が紹介する業者以外に依頼しても構わない。現在の認定業者は 1225 社あり、サイト上でそれぞれの業者のサービス範囲や得意分野を知ることができる。また担当している店舗に対する消費者からの評価も掲載されており、業者を利用した場合に平均よりどれだけ高い評価が得られるのか効果を確認できる。料金は業者や委託する業務内容によって様々で、月額固定料金の場合もあれば、注文数・売上額に応じて設定されている場合もある。

天猫運営サービス http://fw.tmall.com/?spm=0.0.0.0.rX8WcD

9. 受注処理・配送業者

天猫は自社で配送会社を持っていないため、基本的に店舗側が自由に配送業者を決めることができる。多くの店舗は複数の業者と契約して、宛先によって一番安い業者を選んでいるようだ。天猫では全国に配送網を持つ EMS、申通快逓、圓通快逓、順豊速運、中国郵政など大手 13 社と提携している。毎日大量の荷物を出荷する EC ショップ向けに割安な料金プランを用意していることもあるので、自社で出荷作業を行う場合は問い合わせてみるとよいだろう。

現地に拠点がない場合や担当スタッフを用意できない場合は、受注から発送までを一括で委託するフルフィルメントサービスを利用することも考えたい。天猫がフルフィルメントサービス「淘宝物流」を用意しているほか、宅配業者もそれぞれフルフィルメントサービスを提供している。

申通快逓の場合、全国にある物流倉庫に商品を納めれば、入荷受付から検品、保管、ピッキング、梱包、出荷、返品交換まで一連の作業を任せることができる。料金は「商品保管費用+注文処理費用+配送費用」で計算されるため、どのくらいの頻度で商品を倉庫に送るのか、日本からの輸出経費や関税費用なども含めて考えることが大切だ。もちろん中国国内の生産工場や卸売業者から直接指定の倉庫に納めることもできる。大型家電製品と小さなアクセリーでは必要となる保管場所の面積も違う。販売商品が具体的に決まり次第、見積もりを依頼してみよう。

10. 代金の支払い・回収

天猫の利用者の多くは、阿里巴巴グループの第三者決済サービス「支付宝(Alipay)」で代金を支払っている。万が一商品が届かなくても必ず代金が戻ってくるエスクローサービスが利用できるためだ。出店にあたっては、まずは支付宝での支払いに対応しておけばよいだろう。このほか店舗によっては銀聯カード(デビットカード)、クレジットカード、コンビニなどでの代理収納、着払い、携帯電話通話料のチャージカード、支付宝カード(プリペイドカード)での支払いに対応している。

同じく店側の代金回収も出店申請時に開設した「支付宝」を通じて行うことになる。代金は購入者が Web 上で品物の受け取り確認操作を行うと直ちに入金される。購入者がどの方法で支払ったとしても同様だ。この時、販売手数料が差し引かれるほか、アフィリエイト等の販促サービスを利用していたり、クレジットカード等で手数料(1-3%程度)が店側負担になっている場合には、その分を差し引いた額が入金される。なお支付宝アカウントにたまった売上金は、登録した銀行口座にいったん振り替える必要があるが、いつでも自由に引き出すことができる。

最後に・・・

初期投資の総額は販売商品にもよるが、天猫に支払う出店費用だけでおよそ 300 万円(保証金 10 万元、技術サービス費 6 万元)かかる。必要に応じて現地法人の設立費用、輸出関連費用、倉庫物流費用、店舗運営費用、広告費用などが必要だ。売上があれば「売上金額×5%」の販売手数料も発生する。在庫を含めると 1000 万円規模の投資になると考えておきたい。

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この記事を書いた人

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