アリババの会員制倉庫型店「盒馬X会員店(フーマーX メンバーストア)」(2020年)

目次

要約と結論

2020年に上海で開業した盒馬X会員店(フーマーX)は、アリババが展開するニューリテール戦略の一環として誕生した会員制倉庫型スーパーである。オンラインとオフラインを融合し、配送にも対応するなど利便性を備えている一方で、SKUの少なさやPB偏重、独自性の弱さから、既存の倉庫型スーパーや盒馬鮮生との差別化が不十分との見方もある。現状はやや中途半端な立ち位置にあり、今後の軌道修正が注目される。

フーマーXの広告画像

新しくオープンした会員制倉庫型店舗、フーマーX とは?

アリババグループが「ニューリテール」を体現するスーパーとして盒馬鮮生(フーマーフレッシュ)を初出店したのは2016年のことだ。

その後、

  • 盒馬mini(小型店)
  • 盒馬菜市(青果特化)

など、消費者ニーズに応じた多様な業態を展開してきた。そして新たに挑戦したのが、会員制倉庫型スーパー「盒馬X会員店」である。これは中国企業による初の本格的な会員制倉庫型店舗とされる。

フーマーXが入るショッピングモール「森蘭商都」

フーマーX に行ってみた

店内は倉庫型らしくラック陳列を採用。通路は広く、比較的ゆったりとした設計。ショッピングモールの入り口には、フーマーのキャラクターである青いカバが出迎えをしていたり、地下にある店舗に向かうエスカレーターの天井の電飾が豪華であったり、中国らしさを感じる内装だ。

フーマーXのキャラクターの青いカバ

入店・会計の仕組み

  • 入店時:会員チェックなし(非会員も入店可)
  • 会計時:会員QRコード提示が必須
店舗入口の様子

商品構成の特徴

PB商品「MAX」シリーズの多さが目立ち、売場の大半がPB商品で構成されている。

  • 特に目立つのが米・穀物類 → ほぼPB
  • 食用油 → PB中心
  • 乾物(ナツメ・白きくらげ等) → PB
商品の大半を占めるPB商品

一方、PB以外では、輸入食品・酒類、トイレタリー用品などが目立った。

中国のローカルスーパーでは、食料品と一緒に家電、文房具、衣類、自転車などが売られていることが多いが、フーマーでは炊飯器やミキサーといった小型調理家電と季節商品であるオイルヒーターが少々並んでいる程度で、冷蔵庫やテレビどころか、文房具や衣類すらも見当たらなかった。また、日本の商品では以下が確認でき、これは、自由貿易区に近い立地を活かした直接輸入によるものとされる。

  • ホットケーキミックス
  • 焼肉のタレ
  • 味噌
  • リップクリーム
  • トリートメント

サービス面の特徴

試食コーナーは非常に人気だった。また、イートインスペース(約30席)もありソフトクリーム(2元)が人気商品 だった。一方で、ただし、フーマーフレッシュで特徴的だった「その場調理サービス」は未導入だった。

大人気の試食コーナー
イートインスペースの様子と軽食を販売する店のセルフレジ
ピザやフライドチキンなどが並ぶショーケースと人気のソフトクリーム(2元)

レジ・決済体験

有人レジが多めで、セルフレジは補助的な構成だった。フーマーXに限ったことではないが、中国は基本キャッシュレスが前提なので決済は非常にスムーズだったが、有人レジに関しては、店員による商品スキャンが終わると自動的に決済がおわっているのでさらに流れがスムーズだった。

有人レジのフロー:

  • 会員QR提示 → 店員による商品スキャン → あらかじめ紐づけたAlipayによる自動決済(支払い用のQRコードスキャン不要)

セルフレジの決済フロー:

  • 会員QR提示 → セルフ商品スキャン → 支払い用QRコードスキャン → 決裁完了
レジの様子

中途半端な位置づけ、早々に軌道修正の可能性も

2020年10月1日のオープン直後は国慶節による連休もあり混雑していたものの、2020年10月末時点ではすでに客足は落ち着いていた。来店客層は、ファミリー、カップル、若者グループ、などで、客層の偏りはとくにないように感じられた。

想定とのギャップ

行ってみて感じた想定とのギャップは、倉庫型店舗にも関わらず

  • まとめ買い客が少ない
  • 車来店も少数

といったことだった。実際の利用実態は「普通のスーパー」 とあまり変わりがないような印象を受けた。

課題点

また、来店時に感じた課題は下記のようなもので、

  • SKUが少ない
  • PB比率が高すぎる
  • 体験価値が弱い

つまり、

  • コストコのような非日常体験もなく
  • フーマーフレッシュのような付加価値サービスもない

非常にポジションが曖昧なように感じた。

友人(消費者)のリアルな声

筆者と同行した友人も

  • 「牛肉は良いが、それ以外はわざわざ来るほどではない」
  • 「普段は近所の市場で十分」

といった意見で、日常使いにも特別用途にもなりきれていない印象を受けた。

今後の見通し

アリババはこれまでにも「ロボットレストラン」「市場型スーパー」 など複数の業態にチャレンジしてきたが、継続しなかった事例も多い。そのためフーマーXについても、現在の形のまま継続する可能性は低く、決断の早い中国企業らしく、早期に戦略修正が行われる可能性が高いという印象を持った。

中国の小売・消費トレンドに関心をお持ちの企業様へ

本記事では、アリババの会員制倉庫型店「盒馬X会員店」を通じて、中国における小売モデルの進化や消費スタイルの変化をご紹介しました。中国市場では新業態や販売手法が次々と生まれており、その背景にある消費者ニーズの理解が重要となります。

当社では、小売動向や消費者行動を踏まえた中国市場調査を通じて、企業様の戦略検討をご支援しています。事例分析や市場理解の段階からでも、お気軽にご相談ください。

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