寧徳時代のEVバッテリー交換ステーション「EVOGO」

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EVOGOとは

新興EVバッテリーメーカーの寧徳時代(CATL)が、子会社の時代電服(CAES)を通じてEVバッテリー交換ステーション「EVOGO」の設置を進めている。

一般的なEVの場合、急速充電でもフル充電には約1時間、家庭用の普通充電器では出力によって10時間以上かかるが、EVOGOの場合、フル充電の専用バッテリーと交換するのにかかる時間はわずか1分だ。

EVOGOはサブスクリプション形式で提供され、1カ月の料金はバッテリー1ブロックにつき399元となっている。走行距離が多く交換回数が増えた場合は別途追加料金が発生する。1ブロックの航続距離は約200kmで、遠方への旅行など長距離を走る際には複数個のバッテリーを事前に搭載しておくこともできるという。

EVOGOの専用バッテリーは、形が板チョコに似ていることから「Choco SEB」と名付けられている。 現在販売されているEVでChoco SEBを採用しているモデルには、一汽集団の「奔騰 NAT」がある。CAESによると、Choco SEBは世界で市販されているEVの8割に適合し、将来3年に渡って発売される全モデルに適合する汎用性の高いバッテリーだという。

バッテリー交換の方法

EVOGOのステーションはシルバーのシンプルな外観の建物だ。駐車場3台分のスペースに設置できる大きさだという。完全自動化サービスとなっているため常駐のスタッフはいない。通常、一つのステーションには48個のバッテリーが用意されている。

ステーションに車両が近づくと、カメラでナンバーを識別する。会員情報とマッチングすると、入り口のバーが上がるので、車を所定の位置に停める。そのまま車内で待機している間に全自動でバッテリー交換が行われるので、完了したらそのまま前進してステーションから出るだけだ。

アプリでは、最寄りのステーションの営業状況、交換可能なバッテリーの残数が確認できるほか、事前にバッテリー交換を予約しておくこともできる。

厦門市がモデル都市に

CAESが拠点を置く福建省厦門市は、EVOGOのモデル都市と位置づけられている。

2022年4月に、最初の4カ所のEVOGOがオープンしている。2022年末までに市内に30カ所を計画しており、最終的には平均して3㎞ごとに1カ所のEVOGOを設置するという。

普及に向けた戦略は

2022年2月には、福建省高速能源公司と戦略的パートナーシップ忘備録にサインしており、両社で合資会社を設立して、福建省の高速道路にサービスエリアとバッテリー交換ステーションを建設、運営する計画を発表している。将来的にはバッテリー交換ステーションのネットワークを周辺の省にまで拡大する構想も伝えられている。

またパートナー開拓も始めており、パートナー契約を結んだ企業が100台以上のEVOGO対応EVを購入することを条件に、CAESの負担でEVOGOを新規設置し、バッテリー交換サービスを提供するという提案を行っているという。

普及の足かせはコストの高さ

中国各地ではEV充電設備の不足が深刻化しており、長期休暇には充電の順番を長い時間待つ「充電難民」が発生したとのニュースが報じられた。2021年のEV新車販売台数は、前年実績の2.6倍となる291万台に上ったが、新たに設置された充電設備はその2割分しかない59.7万基だった。

ならばEVOGOのようにバッテリーをまるごと交換する方が圧倒的に便利で、もっと普及してもよいように感じるが、バッテリー交換の最大のネックはステーションの建設・運営コストというよりも、EV側にかかるコストの高さだ。

一般的に自動車は緻密な設計が行われており、何百㎏もあるバッテリーが配置される床下に余分なスペースはない。しかし政府はバッテリー交換タイプのEVに厳しい耐久性基準を設けており、Choco SEBに対応する車両の場合、少なくとも8000回のバッテリー交換が可能な耐久性を備えていなければならない。

さらに開発段階で、少なくとも5000回のバッテリー交換試験の実施が義務付けられており、正常にバッテリー交換が完了できるだけでなく、車両の構造にゆるみや変形、き裂、脱落等が発生してはならないこととされている。この基準をクリアするために、一般のEVよりも余計なコストがかかるというわけだ。

Choco SEB は大半のEVに適合するバッテリーだというが、今後どれだけの自動車メーカーがChoco SEBを採用するかは未知数だ。EVOGOの普及は中国のEVバッテリー大手であるCATLの手腕にかかっている。

寧徳時代(CATL) 公式サイト https://www.catl.com(中国語、英語)

※本稿内の画像は全て同社公式サイトより引用

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