1. 中国でも人気!10 年以上前から徐々に普及
カラーコンタクトレンズ(カラーコンタクト)は、中国語で「彩色隠形眼鏡」、「彩片」、「美瞳」などと呼ばれ(隠形眼鏡はコンタクトレンズの意)、日本と同様に若い女性に人気だ。多くは韓国や欧米メーカーの製品だが、中国国内メーカーによる国産製品もある。正規取扱店として眼鏡販売店や薬局で販売されているほか、天猫(Tmall)などのネットショップはもちろん、若者が集まる繁華街や地下商店街の化粧品店、アクセサリーショップ、美容院、露天などでも安価に売られている。
中国でカラーコンタクトを買うのは、中高生や大学生を含む若い女性が中心で、大学生や社会人ともなればオシャレのために毎日つけている人もいる。業界団体のまとめによれば、国内で販売されるカラーコンタクトは年間 1 億枚を超えており、手軽に購入できるオシャレアイテムとして認知度は高まっているが、コピー商品や粗悪品によるトラブルが絶えず、知識不足を原因とする目のトラブルが多数報告されているのが現状だ。
2. 中国での管轄管理
カラーコンタクトは国家医療器械分類目録で第三類医療器械に指定されており、輸血・輸液設備と同水準の厳しい管理基準が適用されている。
中国国内のメーカーは、各省の食品薬品監督管理総局(薬監局)が発行する「医療器械生産企業許可証」を取得しなければカラーコンタクトを生産することができない。また商品の流通においては、当局による安全性および有効性に関する審査を受け、流通許可となる「医療器械注冊証(医療器械登録証)」を取得する必要がある。商品パッケージには当該商品の医療器械注冊証番号の記載が必要だ。小売店舗の経営および販売には、営業ライセンスに加えて薬監局の「第三類医療器械経営許可証」が必要となる。つまり中国では「生産許可」、「医療器械登録証」、「経営許可証」の 3 つが揃って初めて、正規ルートで購入した合法的なカラーコンタクトとみなされる。
なお第三類の「医療器械生産企業許可証」は、医療器械監督管理条例および医療器械生産監督管理弁法を根拠としており、外資企業の取得も可。「医療器械注冊証」は医療器械監督管理条例および医療器械注冊管理弁法を根拠としており、海外製の商品も登録しなければ中国国内で販売、使用することができない。また「第三類医療器械経営許可証」は、医療器械監督管理条例および医療器械経営企業許可証管理弁法を根拠としており、営業ライセンスの申請に先立って取得しておく必要がある。
このように中国では生産、製品、販売のそれぞれを管轄する法律があり、厳しい条件を設けた許可制度を採用している。しかし実際にはヤミ工場で生産されたコピー商品や粗悪品が出回っており、安価な商品の多くは販売許可を持たない店で販売されている。輸入商品についても正規ならば医療器械注冊証の番号が明記され、中国語の取扱説明書が付属しているはずだが、「直輸入だから」と説明して注冊証の番号も説明書もない商品を売り渡す例も確認されている。各地方政府はたびたび一斉取り締まりを行っており、2014 年 6 月 1 日に施行された新「医療器械監督管理条例」では無許可販売の罰則を強化している。
3. 格安粗悪品から直輸入品まで種類は豊富
中国で販売されているカラーコンタクトの多くは、韓国や欧米などの海外メーカーの製品だ。2012 年の調査によると、国内で販売されている商品の 90%以上は海外で生産されたもので、このうち韓国製が 80%を占めていた。医療器械注冊証の例医療器械経営企業許可証の例右に経営範囲として販売可能な品目が記載されている。
製品にもよるが度ありと度なしのものがあり、虹彩部分を着色するカラータイプとレンズの周辺部分のみを着色するリングタイプのいずれも販売されている。また使い捨てではないものと、1 日・2 週間・1 カ月・半年などの各種使い捨てタイプがあり、選択肢は幅広い。
現在販売されている全ての商品を網羅することは難しいが、インターネット上で販売数が多いとみられる一部の商品について、価格と購入者のコメントを整理した。
● 「ワンデーアキュビュー・ディファイン(安視優 美瞳 妍妍)」30 枚入り
メーカー:ジョンソン&ジョンソン価格:30 枚入り 178 元、5 枚入り 29.9 元 (アマゾン中国)
-ずっと使っている。使い心地も自然。
-使っていて楽。ちょっと寝てしまっても痛くならない。色も自然。
-店で買うより安くて、保証もあるのがいい。
-本物。店で買ったものと同じ。目がごろごろしない。
-こんな包装は国内で違法じゃないの?日本語の箱に英文のシールが貼ってあるだけ。
-30 枚入りで 6 枚破れた。最悪。-つけて 2 時間で限界。ニセモノだと思う。もう買わない。
●「ラセル(蕾絲明眸)」2 週間用、6 枚入り
メーカー:ボシュロム価格:98 元(アマゾン中国)
-初めてのコンタクトだけど痛くない。
-キレイで自然。旅行の時につけてる。
-価格性能比が高い。ずっとこれ。
-レンズの色ははっきりしていないけど、友達には目が大きくなったと言われた!
-質が悪すぎる。視力も悪くなって最悪!
-つけてすぐ充血した。眼科で他のコンタクトを買った時は大丈夫だったのに。
-前買ったものと包装が違う。ニセモノだと思う。充血したから捨てた。
●「ラセル・カラーズ(蕾絲衒眸)」2 週間用、6 枚入り
メーカー:ボシュロム価格:68 元(アマゾン中国)
-直径が大きいけど意外に痛くない。
-灰色がいい。ハーフみたいに見える。
-嘘っぽい。大げさすぎる。
-色落ちした!一緒に買った他の商品は大丈夫だったのに。
●「X-Blue」1 年用、1 枚入り
メーカー:WEICON(上海衛康光学眼鏡有限公司)価格:19.9 元(アマゾン中国)
-周りのバラ模様がキレイ。自然で痛くない。
-黒は模様が見えにくい。でも着け心地はいい。
-すごくお買い得。直径も大きくないしいい。
-安いし評価も良かったから買ったけどニセモノだと思う。
-写真と実物が違いすぎ。色も薄いしつけると痛い。
●「海儷恩靚彩」1 年用、1 枚入り
メーカー:海昌(HYDRON、台湾永勝光学股フェン有限公司)価格:49.9 元(アマゾン中国)
-色も自然で付け心地も良い。
-写真撮影のために購入。ごろごろする。
-以前買った韓国製よりいい。半年くらいで捨てている。
-コンタクト歴は 10 年以上だけど、こんなに痛いのは初めて。
-硬くてつけにくい。
-1 日つけたら変色した。
●「卡洛尼大眼女孩美瞳」1 年用、1 枚入り
メーカー:韓国 M.ICONTACT Co.ltd価格:26 元(天猫・徳生堂大薬房旗艦店)
-本当にハーフみたいに見える。目も大きくなる。
-薄くて付け心地もいい。今までで一番いいコンタクト。
-包装がしっかりしている。薄くて痛くない。
-直径が大きすぎる。
-鼻につくにおいがして、怖くてつけられない。
●「眸惇巧克力(7Modern チョコレート)」1 年用、1 枚入り
メーカー:韓国 DUEBA Contact Lens Co.価格:45 元(天猫・百洋健康大薬房旗艦店)
-ずっと愛用。薄くて使いやすい。
-色も大きさもちょうどいい。
-とてもよかったので、他の色を追加購入。
-つけ慣れないせいか痛い。乾く。
-ごく普通。目が大きく見えるかわからない。
●「璐可可(Lukoko)」1 年用、1 枚入り
メーカー:青島紐巴依欧光学制造有限公司価格:2.48 元(天猫・京衛大薬房官方旗艦店)
-安くて質もいい。リピート買い。
-キレイでとても満足。
-度数もちょうどいいし、付け心地もいい。
-つけてしばらくはごろごろする。
-目の中ですぐずれる。本が読みにくい。
4. 天猫への出店について
中国最大手の BtoC サイト「天猫(Tmall)」をみると、カラーコンタクト(彩色隠形眼鏡)のカテゴリーには 5780 アイテムが出品されている(2014 年 11 月 13 日時点)。天猫は法人しか出店できないルールだが、現時点ではメーカー自らが出店する例はなく、86 店舗全てが薬局・ドラッグストアで、いずれも「ブランド直売」を掲げている。
天猫では、ブランドの権利所有者が自ら出店する旗艦店、正規販売店の資格を持ち当該ブランドの商品のみを販売する専売店、正規販売店などから複数ブランドの商品を仕入れて販売する専営店の 3 種類の出店タイプがある。日本のマツモトキヨシやドン・キホーテのように、複数ブランドの商品を販売していながら店自体がブランドとして認知されている場合には「売場型旗艦店」として旗艦店扱いで出店することができる。天猫でカラーコンタクトを販売している薬局・ドラッグストアもこの売場型旗艦店だ。
天猫への出店には、中国国内で登記された法人でなければならない(内資、外資は問わない)。出店にかかる費用は、保証金として最初に 30 万元(約 540 万円)を納める必要があるほか、いずれの出店タイプでも、技術サービス費用として年 3 万元(約 54 万円)、販売手数料として 1 件につき売上金額の 3%がかかる。技術サービス費用は、年間売上が18 万元以上で 50%を返金、60 万元以上で全額返金となる。
出店申請時に必要な書類は以下の通り。
このほか、中国国内での商標登録証が求められる可能性がある。なお GSP 認証とは、薬品経営品質管理規範(Good Supply Practice)認証の略で、医薬品の流通管理に関するルールを定めている。医薬品の卸売・小売事業者は取得が必要となる。
5. 小売店の販路拡大を狙うには
メーカーではなく小売店が中国への販路拡大を検討する場合、制度上は現地法人を設立すれば実店舗とネットショップのいずれも出店が可能だ。しかし実際には、各種許可証の取得が難しかったり、手続きに時間がかかったりするため、現地企業の買収やパートナー提携の道を模索するのが一般的だろう。また商品自体に関する許可証類、例えば医療器械注冊証や商標登録などは、メーカーが自ら申請人として手続きを行う必要があるため注意が必要だ。
実店舗による販売を検討する場合、コンタクトレンズの正規販売店や眼科、ドラッグストアなどと提携することが考えられる。コピー商品や粗悪品が横行していることから、“日本企業”が販売する正規商品であること自体が大きな武器になるだろう。また初めてにもかかわらずネットショップで購入し、レンズが目のカーブと合わないために目を傷めたり、正しい取扱い方法や洗浄方法を知らないまま使用している人が多いことから、店頭で正しいケアを教えることも価格以外の差別化になる。
一方、ネット販売を検討する場合は、最大手の天猫に薬局・ドラッグストアしか出店していないことを鑑みると、現地のドラッグストアと提携するのが早道となりそうだ。独立した EC サイトを開設する場合は ICP ライセンスなども必要になるため、よりハードルは高くなる。ネット販売で中国市場を狙う場合、台湾や香港にサイトを置いて個人輸入の形をとる方法も検討されるが、台湾ではコンタクトレンズのネット販売が全面的に禁止されている。日本にある EC サイトに中国語ページを設けて、国際配送する方法も考えられるが、医薬品であることから中国でのプロモーションが制限される可能性にも注意したい。