1. 医療機器として厳しく管理
中国でコンタクトレンズは第三類医療機器に定められており、販売にあたっては2004 年に定められた「医療器械経営企業許可証管理弁法」に基づいて、「医療器械経営企業許可証」を取得する必要がある。これは店頭で販売する場合のみならず、インターネットを通じて販売する場合にも同様だ。天猫(Tmall)、京東(JD.com)といった BtoC 向けの EC プラットフォームでは、コンタクトレンズの販売を希望するショップに対して同許可証の提示に加え、資本金や経営年数、衛生証明書、正規代理店からの仕入れを証明する書類などを求め、厳しい出店審査を行っている。
天猫に出店するにあたって必要となる許認可の書類は、出店の形態(旗艦店、専売店、専営店)を問わず、増値電信業務経営許可証、インターネット薬品情報サービス資格証、インターネット薬品交易サービス資格証、薬品経営許可証、GSP(Good Supply Practice)認証証書、医療器械経営許可証、食品流通許可証、ICP 備案で、必要に応じてその他の書類が求められる場合もある。
2. コンタクトはドラッグストアが販売
中国の IT 調査会社、易観国際が発表した 2015 年 2 月末時点の調査結果によれば、EC サイト大手の天猫、京東、1 号店における店舗別コンタクトレンズ販売数トップ 10は以下の通りだった。多くの店舗名にある「大薬房」は薬局・ドラッグストアを指す。
京東と 1 号店は独立型 EC で、アマゾンマーケットプレイスのように一部モール形式を組み合わせている。両サイトとも自社販売が上位に入っているのは、正規商品を取扱っているはずだという運営会社への信頼の高さによるものだろう。特に京東は独自の物流網による配送サービスが好評で、総合的な満足度の高さが販売数につながったようだ。
なお中国でも初めてコンタクトレンズを使う場合には眼科医の処方が必要とされているが、ネットショップの多くは処方箋の提示を求めていない。度数も普段使っているメガネの度数を目安に換算表を使って選んでいるような状況だ。
あるショップの度数換算表上段がメガネの度数、下段がコンタクトの度数
3. 安心の海外有名製品と安価な韓国製品に二極化
中国のコンタクトレンズ市場には海外の有名ブランドも数多く進出しており、ネット販売も好調だ。BtoC マーケット最大手の天猫では 100 を超えるブランドのコンタクトレンズが販売されており、なかでも米ボシュロムのコンタクトレンズは 2014 年 11 月11 日に開催された巨大セール「双十一」の当日だけで 1000 万枚も売れている。中国の IT 調査会社、易観国際が発表した 2015 年 2 月末時点の調査結果によれば、天猫、京東、1 号店の各 EC サイトのブランド別販売数トップ 10 は以下の通りだった。
中国政府によってコンタクトレンズの生産販売が厳しく管理されていることからブランドの集中が比較的高くなっており、いずれのサイトでも海昌(米・HYDRON)、 博士倫(米・ボシュロム)、 強生(米・ジョンソン&ジョンソン)、衛康(中・WEICON)、愛漾(韓・Eye-young)、視康(日・チバビジョン)、世紀凱達(中・KING VIEW)、科莱博(英・Clearlab)といったブランドが上位に食い込んでいる。
4. サイトにより販売傾向に大きな違い
コンタクトレンズのタイプ別で見ると、EC サイトごとにさらに大きな特徴があることがわかる。天猫で購入されているコンタクトレンズの 81.95%が 1 年使い捨てタイプで、1 週間使い捨てや 1 カ月使い捨てタイプは圧倒的に少なかった。京東は 1 年使い捨てタイプが 18.23%、半年使い捨てタイプが 35.34%、1 日使い捨てが 28.13%で最もバランス良く売れていることがわかる。1 号店では逆に 1 日使い捨てタイプが過半数を超える52.07%で、1年使い捨てタイプが1週間使い捨てタイプに並んで最も少なかった。
サイトによって販売傾向が大きく違う理由として、天猫、京東、1 号店のそれぞれの市場におけるポジショニングの違いが挙げられる。天猫はブランドの公式ショップを数多く抱えており、高価なものは信頼できる直営店から購入したいと考える消費者が集まっている。また天猫と京東は家電から食品まであらゆる商品を取扱っているが、1 号店はネットスーパーから出発したこともあり日用品の扱いが多いという特徴がある。