中国政策速報|全人代2026:政府活動報告のポイント ― 成長目標・財政政策・注目産業

2026年3月5日、北京で中国の国会にあたる全国人民代表大会(全人代)が開幕し、李強国務院総理が政府活動報告を発表しました。政府活動報告は、前年の政策実績と当年の政策方針を示す重要な演説であり、中国の経済運営や産業政策の方向性を示すものです。

今回の報告は、「第14次五カ年計画」が完了し、新たに「第15次五カ年計画(2026〜2030年)」が始まる節目の年に発表されたものであり、中国の中長期政策の方向性を占ううえでも重要な内容となっています。

※目標値と比較しやすいよう、参考として2025年実績を一部併記しています。全体として、目標値はやや慎重で現実的な水準に設定されていることがうかがえます。
目次

総括

2026年の政府活動報告では、中国経済の重点が従来の「規模拡大」から、AIやグリーンエネルギーなどを中心とした「質の高い発展(技術自立と脱炭素)」へと移行していることが明確に示されました。

同時に、大規模な財政出動による消費・投資の下支え、外資企業に対する市場開放の継続も打ち出されています。これらの政策により、関連分野では新たなビジネス機会の拡大が見込まれます。

2025年の実績

厳しい外部環境のなかでも、中国経済は一定の安定を維持し、主要目標の多くを達成しました。

マクロ経済

・GDP成長率: 5%成長を達成(GDP総額140.19兆元)
・雇用: 都市部新規就業者数1267万人
・都市部調査失業率: 平均5.2%

産業・テクノロジー

・新エネルギー車: 年間生産1600万台超
・工業ロボット: 生産28%増
・集積回路(半導体): 生産10.9%増
・EV充電施設: 2000万箇所を突破

2026年の主要目標

「第15次五カ年計画」の初年度として、安定成長と構造転換の両立を目指す目標が設定されました。

経済・雇用・物価

・GDP成長率: 4.5〜5%(2025年実績: 5%)
・都市部新規就業者数: 1200万人以上(2025年: 1267万人)
・都市部調査失業率: 5.5%前後(2025年: 平均5.2%)
・消費者物価指数(CPI)上昇率: 約2%(2025年はほぼマイナス)

環境・その他

・CO₂排出量(GDP単位): 約3.8%削減
・食糧生産量: 約1.4兆斤

大規模な財政政策

目標達成のため、大規模な財政政策と国債発行が実施されます。

財政政策

・財政赤字率: 約4%(赤字規模5.89兆元)
・一般公共予算支出: 30兆元

国債・債券政策

・超長期特別国債: 1.3兆元
 (消費支援2500億元、設備更新2000億元)

・地方政府特別債券: 4.4兆元
・大型国有銀行資本補充: 特別国債3000億元
・内需促進特別資金: 1000億元

注力産業分野

政府資金は主に次の分野へ投資される見通しです。

(1)内需拡大

・消費財買い替え支援(以旧換新)
・設備更新支援
・内需促進特別資金

(2)「新質生産力」・未来産業

・半導体
・航空宇宙
・バイオ医薬
・「低空経済」
(ドローンなど)
に加え、
・量子技術
・エンボディドAI
・ブレイン・マシン・インターフェース
・6G

などの未来産業への投資も示されました。

(3)外資系企業への市場開放

・付加価値通信
・バイオテクノロジー
・外資独資病院

などで開放パイロット(実験的な取り組み)を拡大。
外資企業への「国民待遇」を強調し、「投資中国」政策を推進します。

(4)グリーン産業

・国家低炭素転換基金の設立
・水素エネルギー
・グリーン燃料

などが新たな成長分野と位置づけられています。

第15次五カ年計画の中長期目標

2026〜2030年の国家発展目標も示されました。

イノベーション
・R&D投資: 年平均7%以上
・デジタル経済: GDP比12.5%

国民生活
・平均教育年数: 11.7年
・平均寿命: 80歳

環境
・CO₂排出量: 5年間で累計17%削減

国家安全
・食糧の生産能力: 約1.45兆斤
・エネルギー生産能力: 標準炭換算で58億トン

台湾に関する方針

政府活動報告では、台湾問題についても基本方針が示されました。

「一つの中国」原則および「92年コンセンサス」を堅持しつつ、
台湾独立勢力や外部勢力の干渉への反対を明確にしています。

一方で、両岸交流や経済・文化協力を通じた融合の深化も掲げており、
台湾同胞が中国本土で同等の待遇を受けられる政策の推進も示されています。

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日本大学大学院経済学研究科 修了、経済学修士。全国通訳案内士(中国語)。
大学在学中、対外経済貿易大学(北京)へ派遣交換留学生として公費留学。大学院修了後、上海の日系企業向け中国進出・会計コンサルティングファームに参画。
主に産業用ロボット、FA、半導体、EMS業界における事業戦略策定を経験。ロボットメーカーの中国駐在を経て、クララ入社後は中国におけるERPシステム・会計システム導入支援や、大手日系ニュース配信サービスの法令アセスメントプロジェクトに従事。
特に、中国サイバーセキュリティ法令対応および中国個人情報保護法における越境対応支援を強みとする。

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