優遇措置も多数!動き出した海南自由貿易港 建設計画

1. 貿易や投資が優遇される自由貿易港の建設計画を発表

中国共産党と国務院は 2020 年 6 月 1 日、海南省に自由貿易港を建設する計画(海南自由貿易港建設総体方案)を発表した。輸入関税の撤廃、企業所得税(法人税)や個人所得税の引き下げ、資金の流動の自由化など 11 分野 39 項目に渡る内容となっており、すでに省内の開発区など 11 カ所が重点産業団地に指定されている。

自由貿易港計画では、2025 年までに一部の優遇策を先にスタートさせ、2035 年をめどに全面的な計画実現を目指す。その先には、今世紀中に強い国際影響力を誇るハイレベルな自由貿易港になるという大きな目標も掲げている。海南省は深センや東莞にもほど近く、中国への投資を考える外資企業にとっては新たな選択肢の一つになるはずだ。

海南省は中国の最も南に位置し、島がまるごと一つの省になっている。面積は約 3.3 万㎢で、ちょうど関東地方の一都六県(約 3.2 万㎢)と同じくらいの広さがある。1988 年には島の全域が経済特区に指定され、輸出加工地として発展してきた。また亜熱帯~熱帯気候に属することから、近年は美しい湾やビーチを利用した海洋リゾート開発が盛んに行われ、「中国のハワイ」とも呼ばれている。

今回の発表について、香港中小型企業総商会(HKGCMB)の巣国明会長は、少なくとも短期的には香港の地位が取って代わられることはないとコメントしており、シンガポール系資本の華僑永亨銀行のエコノミストも、海南省が香港の水準に追いつくには時間がかかるとの見方を示している。しかし中国政府は 80 年も先の今世紀末を見据えた超長期的な視野にっている。急速な中国化が進む香港の動勢を見通すことは難しいが、そう遠くない未来には互いを脅威とするのではなくパートナーとして、中国南方の二大自由貿易圏を構成する可能性も十分考えられる。

なお海南島の自由貿易港化計画は、今回突然発表されたものではない。最初の構想は2018 年 4 月に習近平国家主席が自ら発表しており、当時は香港に対抗して海南省を国際金融の拠点とする考えだと見られていた。その後、2018 年 10 月に海南省が第 4 陣目の自由貿易試験区に指定され、現在までに様々な優遇政策が試験的に実施されてきた。

2. 海南自由貿易港計画の具体的な内容

11 分野 39 項目にわたる政策のうち、主要な 4 項目の要点は次の通りとなっている。

これらの政策は 2 段階に分けて実施されることになっている。まず 2025 年までの重点任務に挙げられているのが、貿易と投資の自由化・便利化の実現による秩序ある市場開放の進展と流動性の確保だ。

具体的には、企業の生産設備や島内の交通関連設備をゼロ関税とし、法人税や個人所得税の引き下げを行う。その一方で、有効なリスク管理の実施や関連する法令の整備を進め、経済発展の質そのものを大幅に改善させることを目標とする。

さらに 2035 年までに、自由貿易港の制度体系や実施モデルが成熟し、自由で便利な貿易・投資・資金流動・人の往来を実現させる。そして、今世紀中には、強い国際的影響力を備えたハイレベルな自由貿易港を全面的に完成させる、との段階的な目標を掲げている。

3. 優遇税制の詳細が明らかに

自由貿易港計画の発表からおよそ 1 カ月が過ぎた 6 月 30 日、財政局と税務総局が海南自由貿易港における優遇税制政策の詳細を発表した。優遇税制の適用期間は 2020 年1 月 1 日から 2024 年 12 月 31 日までの 5 年間だ。

まず法人税では、国または海南省が定める奨励産業に従事する企業について、法人税を通常の 25%から 15%に引き下げる。現時点では、観光業、現代サービス業(保税倉庫、国際物流、流通加工、コンテナ輸送等)、ハイテク産業(IoT、ブロックチェーン、デジタル貿易、航空宇宙、生態環境、生物医薬、新エネルギー車等)が奨励産業に該当する。また、これら奨励産業の企業が海外直接投資によって得た所得を非課税とする。

個人所得税では、海南省の発展に重要な人材と位置づける一部の専門人材について、最高税率を通常の 45%から 15%に引き下げる。

なお先に出された自由貿易港計画では、2035 年までに海南省に登記する全ての企業に法人税 15%を適用するとしており、個人所得税は 15%、10%、3%の 3 段階の税率を適用する方針が記されている。今回は暫定的に適用期間を 5 年としているが、2025 年以降も優遇税制は継続され、優遇内容はさらに拡大する見通しだ。

4. 関連施策も次々と具体化

まず 6 月 3 日には、奨励産業の重点産業団地として省内の 11 カ所が指定された。

奨励産業のうち観光業の分野では、島南部の陵水黎族自治県に位置する陵水黎安国際教育創新試験区が指定され、観光業を軸とした教育領域の対外開放を担う。すでに中央民族大学、北京体育大学、中国伝媒大学の 3 校が、海外の大学と共同で新たな教育機関を設置する計画を進めており、開校すれば在籍学生数は 3 万人を超える。

現代サービス業の重点産業団地に指定されたのは、島の北部にある海口江東新区と海口総合保税区、南部にある三亜中央商務区、そして東部にあるボアオ楽城国際医療観光先行区の 4 カ所だ。

ハイテク産業では、洋浦経済開発区、海口国家ハイテク産業開発区、三亜崖州湾科技城、文昌国際航天城、海南生態ソフトウエアパーク、海口復興城インターネット情報産業パークの 6 カ所が指定された。

このうち、海口江東新区、海口総合保税区、海口国家ハイテク産業開発区、海口復興城インターネット情報産業パークの 4 カ所には、7 月 22 日に人材総合支援拠点が設置された。支援拠点では、人材採用にまつわる助成制度などの説明や人材紹介のほか、自由貿易港で働く外国人に必要な許可証などの申請相談にもワンストップで対応する。

また計画には、自由貿易港として船舶国籍証書を発給することが明記されていたが、6 月 4 日までに海運大手の中遠海運控股股フェン有限公司(COSCO)のパルプ輸送船「興旺号」に対し、初の船舶国籍証書を発給している。国籍証書を持つ船舶は、海南自由貿易港において外国船と同様に輸出時の税金還付といった優遇措置が受けられる。

続いて民用航空局は 6 月 14 日までに、海外の航空会社に対し自国を経由せず海南省と第三国を結ぶ国際定期便・国際貨物便の運航を試験的に認めると発表した。これは国際航空自由化の「第 7 の自由」にあたるもので、中国が認める空の自由権では最も自由度が高い。「第 7 の自由」の試験開放は海南自由貿易港計画には含まれていないが、海外の航空会社や物流会社の進出を促す目的から、今回タイミングを合わせて航空分野の開放にも積極的な姿勢を示したものとみられる。

さらに、自由貿易港としての投資環境を整備する目的から、海南国際仲裁院(裁判所)が商事紛争を専門に扱う国際商事調停センターを海口市に設置した。裁判所は、センターの調停人のうち 3 分の 1 が海外出身者であることをアピールしており、海外の習慣や国定的な慣例、国際条約等に照らして客観的で公正・公平な調停を行うと説明している。

5. 免税政策では個人にもメリット

海南省ではかねてより離島免税政策が実施されているが、自由貿易港計画に更なる弾みをつけようと 7 月 1 日より対象範囲や金額が拡大された。

観光客(省外へ赴く海南省住民を含む)の免税ショッピング限度額は、これまで 1 人あたり年間 3 万元(約 45 万円)だったが、年間 10万元(約 150 万円)に引き上げられた。ショッピングの回数に制限はなく、商品 1 つあたりの免税限度額 8,000 元も廃止された。

免税対象品もこれまでの 38 品目から 45 品目に拡大しており、新たに天然はちみつ、お茶、タブレット PC、ウェアラブル端末、携帯電話、電子ゲーム機、酒類の 7 品目が追加された。携帯電話は 1 人 1 回あたり 4 台まで、ビール・ワイン等の酒類は合計 1.5 リットルまでの制限がある。かねてより対象品となっていた化粧品は、今回新たに 30 個までの制限が設けられている。

税関総署のまとめによれば、7 月 1 日から 7 月 27 日の海南省の離島免税販売額は22.19 億元で、前年同期比 234.19%の大幅な増加となった。ただし新型コロナウイルスの影響からか、購入客数はのべ 28.1 万人と同 42.71%の増加にとどまっている。

また海南自由貿易港計画には、島内に免税店を増やす方針も示されている。すでに海口市では免税ショッピングモール「海口市国際免税城」の建設が進んでおり、高級レストランや映画館などを備えた総合レジャー施設として、2023 年末の全面開業を予定している。

捜狐網や騰訊網などのネットメディアが報じたところによれば、EC 大手の京東(JD)も越境 EC 専門サイト「京東国際」の実店舗という位置づけで島内に免税店や海外製品の体験型店舗をオープンする計画があるという。すでに京東は国際物流に強みを持つ卓志集団(TOP IDEAL)と共同で、海南洋浦経済開発区にある洋浦港で保税倉庫を運用している。京東は現時点で免税店の営業ライセンスを持っていないが、新たな利益源として有望であることから早々にライセンスを取得するとの見方は強い。

6. 市場は動き出した

海南自由貿易港の公式サイトによれば、6 月 1 日の計画発表から 7 月 20 日までの 50 日間の新規登記件数は海口市だけで 1 万 4,967 件に達し、前年同期比42.52%の増加となっている。このうち法人の設立登記は同 109.25%増の 8,274 件で、外資系企業の設立登記も 68 件に上っている(2019 年通年の外資系企業の登記数は 338 件)。産業別では、教育業が同530%増、医薬品業が同 300%増、情報通信・ソフトウェア・IT サービス業が同 209%増、金融業が同 200%増となっており、海南自由貿易港への関心の高さが伺える。

日系企業では、製薬大手の大塚グループの現地法人が海南省を視察しているほか、7月 31 日にはローソンが日系コンビニとしては初めて海南省へ進出することが発表された。1 年ほど前に省政府から進出を打診されたといい、今年秋にも現地の運営会社を通じて海南 1 号店をオープンする。今後は 3 年以内に 300 店舗を展開する計画だという。

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<本ガイドブックの内容>
1.背景
 2.海南省の概要紹介
  基本情報
  発展の歴史
 3.海南自由貿易港の設置全体案の内容
  目的
  制度設計 
  段階的な目標
 4.優遇措置
 5.海南自由貿易港と他の地域の比較
  他の自由貿易区・一般地域の比較
  海南自由貿易港と香港の比較

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