中国のテレビショッピング市場

目次

1. テレビショッピング事業者

テレビショッピング事業を行うには、国家新聞出版広電総局が発行する営業ライセンスが必要となる。2015 年末時点でライセンスを所有する企業は 34 社しかなく、テレビ局ばかりだ。営業許可地域別にみると、全国のライセンスを持つ企業は 11 社、省内は15 社、複数の省内は 1 社、市内は 4 社、複数市内は 3 社となっている。

ライセンス取得のハードルは高く、「広播電視管理条例」及び「広播電台電視台審批管理弁法」の規定によると、自社に番組の審査を行う体制があること、商品の品質保証システムが整備されていること等に加え、営業許可地域が全国の場合に必要な資本金は 1億元以上、省内で 5,000 万元以上、市内で 3,000 万元以上となっている。一方で、全体の 85.3%の企業が年間売上 1 億元以上で、これは中大型企業に相当する。

なお、中国では、外資あるいは中外合資、中外合作経営によるラジオ局やテレビ局の開設は禁止されている。

2. 市場規模

2015 年時点で運営する 32 社の売上の合計は 399 億元で、前年同期比 13%増だった。営業許可地域別にみた平均売上高は、全国が 25.1 億元、省内は 7.1 億元、市内は 3.4 億元となっている。売上の伸び率をみると、省内や市内を放送地域とする企業の 6 割以上が前年比でマイナスとなっていることがわかる。

平均粗利率は 30%で、一般的な百貨店業の 17%や大手 EC サイト「京東」の 13.3%に比べて高い水準となっている。ライセンス所有企業 30 社を調査したところ、粗利率が 40%を超えている企業は全体の 7%あり、粗利率 30-40%が 37%、粗利率 20-30%が47%、粗利率 20%以下が 9%だった。

全国を放送地域とする企業の平均粗利率は 31%で、業界平均を超える企業はおよそ半数の 45%だった。また、年間売上が 20 億元を超える企業の 80%は粗利率が業界平均の 30%を下回る水準にあるが、年間売上 10 億元以下の企業の半数は粗利率が 30%を超えている。

中国のテレビショッピングは会員制をとっており、2015 年の総会員数は前年同期比17%増の 6,819 万人だった。これは中国の総人口の 5%にあたる。会員数が 500 万人を超えるのは全国を放送地域とする企業のみで、省内や市内を放送地域とする企業には会員数が 10 万人以下のところもある。また別の調査では、消費者の 67%がテレビショッピングを利用したことがないと答えている。利用したことがある残りの 33%の消費者のうち、購入回数は 5 回以下が 30%を占め、6 回以上はわずか 3%にすぎない。また購入者の年齢は 55-65 歳が 19%と最も高く、25-34 歳と 25 歳以下がそれぞれ 14%、35-44 歳と 45-54 歳はそれぞれ 10%と 9%にとどまっている。

3. 取り扱い商品と販売チャネル

中国のテレビショッピングで最も売上が多い商品は、家庭用品で全体の 17%を占めている。続いてアパレル・バッグ類が 14%、家電製品が 10%となっている。

最近は取り扱い商品の同質化が深刻になっている。そのため各社は自社ブランド商品の開発に取り組んだり、地元の特色ある商品の販売に力を入れているほか、国際的な有名ブランドと直接契約して、正規品を販売することで会員顧客の満足度向上に努めている。さらに今までは実物商品ばかりであったが、サービス型の商品も登場している。

販売チャネルは依然としてテレビ番組が売上全体の 78%を占めているが、インターネットが 5%、実店舗が 3%、その他が 14%と多様になっている。近年はスマートフォンが直接の販売チャネルになるだけでなく、テレビショッピング番組の動画配信をしたり、微信(WeChat)等の SNS で口コミを広げたりとプロモーションにも広く利用され始めた。このほか、実際の商品を確認できる店舗を開設したり、共同購入のスタイルをとったり、電話販売やカタログ販売を組み合わせていることもある。

4. テレビショッピングの今後

韓国ではテレビショッピング産業の成長を国家戦略の一つに掲げ、テレビショッピング企業の海外進出を支援しているという。主にインドやベトナム、タイ、マレーシア等の ASEAN 諸国の市場に参入しており、海外のテレビショッピング市場における韓国製品のシェアは 70-80%に上るようだ。

中国においても、市場の需給バランス改革の進展や中国から中央アジアを経て欧州に至る「一帯一路」経済圏構想の推進によって、中国製品の海外進出が進むと予想される。黒竜江省内を放送地域とする天鹅购物频道は、すでにオーストリア、ドイツ、ロシア等の企業と提携しており、海外のテレビショッピング向けに中国製品を輸出し、逆に自社番組で販売する海外製品の輸入も行っている。

また単なるテレビショッピング番組の制作や販売にとどまらず、より上流の工程、つまり商品の企画制作の段階から関わるケースが増えている。オリジナル製品は、他社との差別化やブランド化につながるため、今後は主流になるものと思われる。増えつつあるサービス型商品は、旅行、保険、マンションの内装工事といった商品のニーズが期待できそうだ。上海を拠点に全国を放送地域とする东方购物频道は、旅行サービスの販売拠点を開設してツアー商品等の販売を行っているほか、市内にモデルルームを用意して内装工事の質の高さをアピールする取り組みを始めている。

投資家もテレビショッピング市場に注目しており、湖南に拠点を置く快乐购物频道の運営会社は 2010 年に紅杉資本(米・セコイアキャピタル)等 3 社から合計 3.3 億元の調達に成功している。一方で、さらなる市場の拡大にはテレビショッピング番組の事前審査を徹底し、個人情報保護を含めた日常的な管理監督の強化がが必要だ。また製品の効果を過度に誇張した宣伝や違法な表現を使った広告を排除したり、コピー商品や品質の悪い商品を一掃するといった努力も必要となる。

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この記事を書いた人

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