北京市城市管理委員会はこのほど、「十四五(第14次五カ年計画、2021-2025年)北京市新エネルギー車のバッテリー充電交換設備発展計画」を発表した。
本稿では、本発展計画の中から2016年から2020年までの概況と十四五の目標について抜粋し、日本語訳をつけて整理する。
十三五(第13次五カ年計画、2016-2020年)のバッテリー充電交換設備概況
北京市の新エネルギー車の保有台数は、2015年の3.6万台から2020年には40万台に増加した。これに伴い、市内の充電設備数は2.1万台から23万台に増加し、バッテリー交換施設(残量の少ないバッテリーを丸ごと充電済みのバッテリーと交換する専用施設)も5カ所から159カ所へと増えている。
EVと充電・バッテリー交換施設が互いに協調して発展する良い状況を形成しており、新エネルギー車の充電・バッテリー交換施設の普及状況において、北京市は全国でもトップクラスの水準にある。
2020年時点の充電設備の内訳は、個人用充電設備が17.5万台、公共充電設備が2.9万台、企業が利用する内部用充電設備が1.9万台、公共交通や物流といった公共サービス業務専用充電設備が0.7万台となっている。
公共用充電設備のうち急速充電可能な設備の割合は2015年末に33%だったが、2020年末には65%にまで増加した。また公共交通、物流、衛生等の公共サービス業務専用充電ステーションが市内に654カ所設けられたほか、タクシー専用のバッテリー交換施設が143カ所ある。
2020年までに北京市の平野部では、平均サービス半径が5キロメートル以下の充電ネットワークが形成されており、特に中心部や経済技術開発区、延慶冬季五輪地区では平均サービス半径が0.9キロメートル以下となっている。
鵬汽車の個人用充電設備の例( 小鵬社区より画像引用)
バッテリー充電交換設備を設置・運営する事業者の状況
バッテリー充電交換設備を設置・運営する事業者の数は増加傾向にあり、2020年末時点で国網北京市電力公司、特来電、星星充電、依威能源、普天新能源などの大手企業を中心に、北京市内だけで170社あまりが営業している。公共用充電設備に限れば、上位5社が市内全体の70%以上のシェアを握っている。
またバッテリー充電交換設備にまつわるビジネスモデルは多様で、個人向けから企業向けまで様々なものが出ている。星星充電、華商三優などは、自動車メーカー向けに顧客であるEV購入者の自宅駐車場に設置する充電設備の工事・メンテナンスサービスを提供しているほか、個人用充電設備のシェアリングビジネスも展開している。
また星星充電、特来電などは、充電設備の生産販売から設置工事、運営メンテナンスまで一手に引き受けることで利益を確保している。
国網北京市電力公司、特来電などは、充電設備のアプリ上で広告を流すことでも収益を得ており、充電ネットワークの利用をきっかけに、EV等の販売、メンテナンス、レンタカー等の付加価値サービスを展開することで複合的な利益モデルを構築している。
家電網のバッテリー充電設備が並ぶ充電ステーション(国家電網より画像引用)
十四五(第14次五カ年計画、2021-2025年)のバッテリー充電交換設備発展目標
2025年までに、新エネルギー車200万台の充電需要を満たすことが可能なバッテリー充電交換設備の設置を目標とし、バッテリー充電交換設備の効率的かつ秩序ある利用、政府部門間の枠組みを超えた協同、デジタル・インテリジェンスによる産業の高度化によって、次の3点を実現する。
1:北京市全域をカバーするバッテリーの充電交換ネットワークを構築し、新エネルギー車200万台の需要を満たす。
2025年末までに、市内の充電設備の総数を70万台とする。内訳は集合住宅に設置する個人用充電設備と公共充電設備が57万台、企業の専用充電設備が5万台、公共充電設備が6万台、業務用充電設備が2万台、バッテリー交換ステーションが310カ所とする。
サービス半径は、市内平野部で半径3キロメートル、中心部で0.9キロメートルとし、充電設備を「探しやすく、使いやすく」することを実現する。バッテリー交換ステーションは5キロメートル未満とする。
中心部に設置する公共充電設備では、急速充電と普通充電の比率が2:1を下回ることなく、その他の地域では急速充電と普通充電の比率が1:2を下回らないようにする。
蔚来(NIO)のバッテリー交換ステーション(NIOより画像引用)
2:効率優先のサービス体制を構築し、各地域の充電交換ニーズとサービス向上に対応する。
バッテリーの充電交換設備の使用効率とサービスレベルの向上に重点を置き、充電設備を各領域の新エネルギー車の充電ニーズに応じて設置することで、充電の利便性とユーザーの満足度を大幅に向上させる。
集合住宅向けには「個人用充電設備+団地内の公共充電設備+新技術・新モデルの応用」という形式により、集合住宅における充電設備設置に関する問題を効果的に解決する。
企業専用充電設備については、資金支援、管理強化、シェアリングによる利用を組み合わせることで、充電設備の規模やサービス品質を改善し、また集合住宅に設置した充電設備との効果的な相互補完を推し進める。
公共充電設備については、大きな需給ギャップがある都市中心部、充電設備空白地域のある農村部、高速道路サービスエリアなどに焦点を当てて、設備設置の最適化とサービスレベルの向上を同時に実現する。
公共サービス業務専用充電設備では、設置場所の開拓と企業連携により、公共交通、タクシー、物流、衛生といった専用分野の充電ニーズへの対応を強化する。“三城一区(中関村科学城、懐柔科学城、未来科学城、北京経済技術開発区)”などの重点地区に、充電サービス総合実証地区の設置を検討する。バッテリー交換に関しては、バッテリー交換ステーションの設置計画を調整・最適化し、バッテリー交換対応EVの開発を促進する。
3:協同発展可能な産業エコロジーの創出によって、持続可能なビジネスモデルの革新と良好な社会的ガバナンスを実現する。
各分野におけるバッテリーの充電交換設備の協同発展と分野横断的な一体化協力を進めることで、政府・企業・消費者などが共同参画する産業発展エコロジーを創出する。
優秀な企業が業界をけん引し、ベンチマークとなることで、業界が持続可能なビジネスモデルを確立することを促進し、業界の変革と高度化をリードする。さらに多次元データを集約することで、分野の違う充電交換設備の相互接続・相互運用を強化し、業界のデジタルインテリジェンスのレベルアップ、管理の精細化、知的意思決定のレベルを向上させる。
北京市城市管理委员会关于印发《“十四五”时期北京市新能源汽车充换电设施发展规划》的通知 http://www.beijing.gov.cn/zhengce/zhengcefagui/202208/t20220809_2788814.html