コロナ禍の北京市における企業の動きと働き方の変化

目次

1. 北京市内にある企業の働き方の変化

北京市では感染拡大を抑えるため、1 月 31 日に市政府が発表した通知に基づき、医薬品・医薬機器の生産・輸送・販売に携わる企業、水道・電気・石油・ガス・通信・市政・公共交通機関などの公共事業企業、スーパーや食品の生産・供給・物流配送などの生活必需品を扱う企業、国家重点プロジェクトに携わる企業に勤める従業員のみ、通常通り出勤することを許可された。これらに該当しない企業に勤める従業員は出勤が禁じられたことから、従業員に在宅でのリモートワークを指示する企業も多かった。

北京日報によると 2 月中旬に行った調査では、北京市内にある企業の 56.4%がリモートワークを採用したほか、フレックスタイム制などで時間や人数を制限した勤務スタイルに変更した企業も 16.7%あった。通常通り勤務していると回答した割合は 26.9%だった。

また春節休暇後にリモートワークで業務を再開した企業の割合は、連休明けの 2 月 3日からが 51.6%、2 月 10 日からが 34.9%で、市内の企業の 86.5%が 2 月 10 日までに業務を再開している。

リモートワークにまつわるトラブルについては、リモートワークを行う企業の 55.4%がきちんと対応できていると回答しており、そのうちの 8 割以上の企業がビジネス向けIT サービスなどを利用して従業員の健康状況(発熱の有無、自己隔離中かなど)を管理していると答えている。

2. ビジネス向け IT サービスの無料提供で一気にリモートワークが普及

2020 年 1 月 20 日に中国で最初の新型コロナウイルス感染者が発表されて間もなく、中国の IT 企業各社が続々とビジネスツールの無償提供を発表した。

ショートムービーアプリ「Tiktok」で有名な字節跳動(バイトダンス)は、1 月 28 日から 5 月 1 日までビデオ会議サービス「飛書」を全ユーザーに会議時間無制限で無料開放した。モバイルチャットアプリ「微信(Wechat)」などで有名な騰訊(テンセント)も、最大300 人が参加可能なオンライン音声会議・ビデオ会議サービス「騰訊会議」を新型コロナウイルス終息まで全ユーザーに無償で提供すると発表した。

EC 大手の阿里巴巴(アリババ)は、ビジネス向けコミュニケーションプラットフォーム「DingTalk」の機能のうち、在宅勤務サポートマニュアル、スケジュール共有、リモートビデオ会議といった重要度の高い機能を無償で利用できるようにし、さらに従業員の健康管理機能を新規リリースした。

これまで中国では、ビジネスシーンにおいて業務効率化ツールのようなビジネス向けIT サービスや E メールが使われることは稀で、プライベートで利用している微信(Wechat)を仕事でも利用することが一般的だった。しかし、企業が在宅勤務に切り替えるタイミングで、ビデオ会議サービスや社内コミュニケーションツール等の無償提供が行われたことがきっかけとなり、北京市内のみならず中国全土でビジネス向け IT サービスを用いたリモートワークが一気に普及することとなった。

3. オンライン会議、電子入札、電子契約が定番に

2020 年 2 月 8 日に国家発展改革委員会が発表した入札・誘致のオンライン化に関する通知(关于积极应对疫情创新做好招投标工作保障经济平稳运行的通知)に基づき、北京市でも企業の業務委託入札、契約、書類作成のすべてが原則オンライン上で行われるようになった。

大手通信会社の中国聯通(チャイナユニコム)は、2 月 11 日にビデオ会議サービスを用いた電子入札を行った。入札審査業務は通常 2 日以上に分けて行うが、今回はオンラインで丸一日かけて完了させた。また中国電信(チャイナテレコム)は、3 月 12 日に中国光大グループとビデオ会議を開き、戦略的提携に関する契約をオンラインで締結した。会議は両社の北京本社で行われ、チャイナテレコム側は柯瑞文理事長、李正茂社長、邵広禄党組副書記が、中国光大グループ側は李暁鵬グループ会長、呉利軍社長、附万軍副社長がそれぞれ出席した。

またオンライン化の動きは企業間だけでなく、行政の場にも見られる。北京市順義区では、ビデオ会議を通じて 25 の重点プロジェクトの契約がオンラインで結ばれた。重点プロジェクトは、スマート新エネルギー車、第三世代半導体、航空宇宙、生物技術など様々な分野に及ぶもので、中国企業以外に日本やドイツなどの外資系企業や合弁会社とも電子契約が取り交わされた。

4. クラスター発生後の市内の企業の対応

市内では 6 月中旬に集団感染(クラスター)が発生した。その際に市政府は、クラスター発生源である新発地市場を 5 月 30 日以降に訪れた人とその濃厚接触者に向けて PCR検査を受けるよう呼びかけを行った。さらに企業に向けて、条件に該当する従業員がいた場合、14 日間出勤させないよう通知を出している。

市内ではしばらく感染者が発生していなかったことからリモートワークを行う従業員の割合を減らしていた企業もあったが、これを機に再度リモートワークの比率を上げるなどして対応しており、企業の間で特に大きな混乱は起きていない。

5. オンラインを併用した実店舗が続出

感染拡大による外出規制で市内の実店舗は営業ができなくなり、規制の解除後も客の流れは激減した。そのためオンラインを活用した販売方法を導入する店舗が増えた。なかでも老舗と言われる北京同仁堂、新華書店、稲香村、牛欄山、菜百、東安市場の 6 店がライブ配信アカウントを開設し、ライブコマースを始めたことは大きな話題となった。

例えば北京の有名観光スポット・王府井にある老舗ショッピングセンターの東安市場は、3 月 19 日から人気アプリ「Tiktok」によるライブコマースと配送サービスを始めた。ライブコマースの番組は毎週火曜日と金曜日の 16 時に始まり、6 時間の生放送中に 100件を超える注文が入る。この番組は大変な人気で、1 日 2 時間以上見ている消費者が6,000 人もいるという。

他にも老舗書店の鐘書閣では、3 月 2 日からフードデリバリーサービス大手の美団と業務提携し、市民に最速 30 分で本を配送するサービスを開始した。サービス開始初日の注文は 9 件にとどまったものの、オンライン注文・配送サービスが始まったという情報が徐々に広まり 1 週間後には 1 日の注文数が 100 件近くまで増え、売上も 1 万元(約15 万円)を超えたという。

同じ書店でも中信書店は、書籍だけではなくコーヒーなどのドリンクや軽食も同時にオンラインで販売したところ、ついで買いするユーザーが増加。現在はドリンクと軽食が売上の 30%ほどを占めている。

なおライブコマース自体は 3 年ほど前に登場し、EC の新しい販売手法として利用が広がっていた。当初は網紅(インフルエンサー)やタレントが、化粧品やアパレル製品、スマートフォンの新製品などを販売することが多かったが、今回のコロナ禍ではこれまでライブコマースと縁のなかった老舗デパートや書店がライブコマースを試みたり、市内の小さなネットショップのオーナーが自らセレクトした商品をライブ配信の番組で紹介したり、なかには工業製品のような BtoB 向け製品を社長や工場長自らが紹介して、販路を開拓するような動きも見られた。

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