中国オンラインゲーム市場の最新動向

目次

1. 中国のオンラインゲーム市場

2018 年 8 月に CNNIC が発表した「中国インターネット発展状況統計報告」によると、中国の 2018 年 1-5 月のオンラインゲーム(クライアントゲーム、モバイルゲーム、WEB ゲーム等)の売上は、前年同期比 24.5%増の 743 億元だった。

2018 年 6 月末時点のオンラインゲームのユーザー数は 4.86 億人で、前年末に比べて4,391 万人増加した。インターネットユーザー全体に占める割合は 60.6%に上る。またモバイルゲームに限ると、ユーザ数は 4.58 億人で、こちらは前年末に比べて 5,123 万人の増加となっている。モバイルユーザー全体に占める割合は 58.2%だった。

2018 年 5 月時点でプレイ可能な状態にあるモバイルゲームは約 152 万タイトルあり、2017 年末時点の 107 万タイトルから 42.1%増加している。

2. 取り締まりはモノから内容に変化

当局によるオンラインゲームの取り締まり活動は、かねてから定期的に行われている。ずっと以前は、取り締まりといえば街で売られている海賊版ソフトがターゲットだった。

その後インターネットやスマートフォンが普及するようになると、インターネットからダウンロードできる状態にある海賊版ゲームや無許可で配信されているアプリの取り締まりが中心となった。

現在も海賊版ゲームや無許可アプリが一掃されたわけではないが、取り締まりの中心は海賊版からゲームの内容へと変化している。特にこの 2-3 年は、ゲームに“法律法規で禁止された内容”が含まれているかどうかが処分の基準となっており、ユーザーからの通報も奨励されるようになった。

なお“法律法規で禁止された内容”については、いくつかの法令で示されているが、例えば「オンラインゲーム管理暫定弁法(网络游戏管理暂行办法)」の 9 条では、①憲法で規定された基本原則に違反するもの、②国家の統一、主権および領土の完全性に危害を与えるもの、③国家の秘密を漏えいし、国家の安全に危害を与える或いは国家の栄誉と利益に損害を与えるもの、④民族的な恨みや民族蔑視を扇動し、民族の団結を破壊し、あるいは民族の風俗習慣を侵害するもの、⑤邪教や迷信を宣揚するもの、⑥デマを流布し、社会の秩序をかく乱し、社会の安定を破壊するもの、⑦わいせつ、ポルノ、賭博、暴力を宣揚し、あるいは犯罪を教唆するもの、⑧他人を侮辱、誹謗し、他人の合法的権益を侵害するもの、⑨社会道徳に背くもの、⑩法律、行政法規、国家の規定で禁止されたその他の内容、と定めている。

とりわけゲームへの規制が強まったと印象付けたのは、2017 年夏に大ヒットした騰訊(テンセント)のモバイルゲーム「王者栄耀」へのバッシングだろう。ゲームに熱中しすぎる子供が社会問題となり、ついには政府系メディアの人民網が、「王者栄耀は架空や虚偽の歴史を扱っており、ユーザーの価値観や歴史観を歪曲する」と名指しで批判するに至った。

騰訊の速やかな対応もあり、結局「王者栄耀」が運営中止に追い込まれることはなかった。しかし、これをきっかけにオンラインゲームへの規制強化が進むのではないかという業界の懸念は見事に的中し、2017 年 12 月末には中共中央宣伝部など 8 部門が共同で「オンラインゲーム市場管理の厳格な規範化に関する意見(关于严格规范网络游戏市场管理的意见)」を発表した。同意見では、国内のゲームに内容が低俗なもの、暴力的なもの、価値観が著しく偏っているもの、わいせつやポルノ表現が含まれるものが散見されるとし、管理監督を強化する方針が示された。また海外で運営されているゲームについても、中国の法律法規に違反するものは通信を遮断すると明記している。

これを受けて行われた集中取り締まりでは、賭博、暴力、低俗、わいせつな内容が含まれていること等を理由に 3,975 タイトルが運営停止等の処分を受けている。

3. 新規タイトルの審査は凍結状態に

中国では 2018 年 3 月に国務院の機構改革が行われた。いわゆる省庁再編にあたるもので、過去にも何度か行われている。

今回オンラインゲームに関わる部門では、工業情報化部は据え置きとなったが、文化部が国家旅游局と統合されて新たに文化旅游部に、国家新聞出版広電総局は新たに国家広播電視総局と名称を変えている。

オンラインゲームのリリースには国家広播電視総局の審査・承認が必要となるが、今年は 2 月11 日を最後に審査・承認結果が公表されていない。これまで文化部が担当していた版号の新規発行作業も行われていないといい、オンラインゲームの新規リリースは事実上の凍結状態が続いている。海外製ゲームの輸入許可は、1 月 11日に PS4「ワンダと巨像」、2 月 5 日に Xbox「ReCore」の許可が出ただけだ。

公式のアナウンスもないため、業界では組織再編による一時的な中断との見方が強く、しばらくして業務体制が整えば審査も再開されるだろうと楽観的に受け止められていたようだ。しかし 8 月 30 日に教育部等 8 部門が発表した「児童青少年の総合的な近視予防・進行抑制の実施方案(综合防控儿童青少年近视实施方案)」に、近視の予防・進行抑制のための取り組みの一つとしてオンラインゲームの総数管理と新規リリースの抑制が盛り込まれたことで、大手ゲーム会社の株価は軒並み下落する騒ぎとなった。制限する数量や基準には触れられておらず詳細は不明だが、子供の近視予防を引き合いにした実質的な規制強化とみられている。

その後 9 月に入り、機構改革後の各部門の担当職務を明らかにする規定が公表されたが、関連すると思しき部門にオンラインゲームに関すると取れる職務は記載されておらず、依然として審査・承認作業が再開されない状況が続いている。

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